連載:おいもと僕の15年 芸人・伊藤智博(LLR)
第三話 きらいな言葉
『責任』っていう言葉が嫌いだった。
なんか押し付けがましいし、重たいし、なるべく避けていきたい言葉。
今、目の前に、フワフワした小さな仔猫がいる。
どうやら母猫に置いていかれてしまったみたいだ。
不安そうに周りを伺い、小さな声を精いっぱい張り上げて鳴いている。
ーーーー
子供の頃、仔猫を拾った。
友達数人と遊んでいた公園のベンチの下に紙袋が置いてあり、
子供の目線だからこそ見つけられたのだけれど、
なにも考えずに引っ張り出すと、その紙袋はゴソゴソ動いてビックリした。
紙袋の中にはまだ目も開いていないような仔猫が4匹入っていて、
その小ささにまた驚かされた。
友達と相談して、今考えると恐ろしいことなんだけれども、
近所の家を一軒ずつ、インターフォンを押してねこを飼ってもらえないか頼んで回った。
奇跡的に、3匹は引き取り手が見つかり、面倒を見てくれると約束してくれた。
残りの1匹をどうしようか話し合った結果、最初に紙袋を触った僕が家に連れて帰ることになった。
母親に事情を説明し、次の日からまた飼ってくれる人を探すことにしたのだけれど、
翌朝、僕を起こしに来た母親は、悲しそうにもう仔猫が動かないことを僕に伝えた。
そして、前日に引き取ってくれた人達からも次々と同じような連絡が我が家に届いた。
その日からしばらく、学校にも行けないくらい落ち込んだ。
たまたま紙袋を見つけてしまった自分を恨み、
自分にこんな役を押し付けた友達を恨み、
小さな命をベンチの下に置き去りにした誰かを恨んだ。
その日から、命を預かるということに臆病になった。
無邪気に犬を飼いたいという幼い弟を叱り飛ばしたりもした。
責任という言葉が嫌いになった。
ーーーー
続きは『雑誌ねこno,124』にて掲載中!
ご購入はAmazonにて
伊藤智博(LLR)
4匹のねこ(ちょび丸、とら丸、まる子、まる助)と柴犬(りき丸)と暮らす愛猫・愛犬家。
ハーレーに乗りアイドル好きでアメカジ好きのコメディアン。
伊藤家の猫と犬たち。
https://www.instagram.com/llritoneko
LEAVE A REPLY